久しぶりに池袋の東京芸術劇場へ。1832年に作曲された、ドニゼッティのイタリア・オペラ『愛の妙薬』を観てきました。
今回は、私の vocal improvisation クラスに参加してくださっている俳優・ダンサーの福原冠さんが出演されている作品のお誘いでした。久しぶりのオペラ鑑賞でしたが、本当に素晴らしかった。冠さんはダンサーとして出演されています。
この公演は「2025年全国共同制作オペラプロジェクト」の一環で、全国の劇場、音楽堂、芸術団体が連携し、単館では成し得ない独創的で質の高いオペラを新演出で制作するという取り組みだそうです。こうしたスケール感のあるクリエイティブなプロジェクトが信頼できる仲間同士の知恵で実現していることに、とても心が動きます。
演出・舞台美術は杉原邦生氏。彼がこのオペラの主題ととらえる「好きという感情の扱い方」は、妙薬によってコントロールできるものではない。その“うまくいかない愛情”の人間味を「かわいい」と見立て、その表現を舞台全体に活かした演出が実に魅力的でした。観終わったあとにすっと心が晴れるような、気持ちのいい感動がありました。
クラシックの古典を伝統的に再現する演出も素晴らしいですが、今回の舞台はセンスよく、とてもユニークで、歌手もダンサーも確かな技術を自然体で、現代的でカジュアルな空気感として表していました。ストーリーのユーモアや可愛らしさが存分に引き出されていて、とても爽やかな印象です。私の好みとしては絵画も古典の宗教画は苦手なので、オペラはすごいのはわかりますが古さが先行してしまうとどうしてもなかなか足が向きません。こういう斬新なオペラだったらまたぜひ行きたい。
久しぶりに生で聴いた声楽家の歌は、歌詞の意味を丁寧に咀嚼し、感情を込めて表現していて圧巻でした。オペラは演出家や声楽指導の意図に応えるために、技術・知識・経験を総動員する必要があり、決して容易ではありません。一方で、ジャズは原曲のメロディーを踏まえつつ、タイミングやリズム、メロディーを自分の声で再構築し、共演者と音楽そのものを創りあげていくもの。同じ“音楽”でも、アプローチが全く異なるのだと改めて感じました。
東京芸術劇場には舞台公演で何度か足を運んでいますが、建物の内部は少し古さも感じられ、改善の余地を感じました。とはいえ、建築そのものはさすが芸術劇場らしい存在感で、駅からすぐという立地も素晴らしい。当日ホールでは職員らしき人たちが来場者にアンケートに協力のお声をかけていたので、今後さらに良くしていこうという流れがあるのかもしれません。
劇場を出ると広場にはダンスのパフォーマンス。久しぶりの池袋、またゆっくり来たいな。

今回の公演『愛の妙薬』のポスター。
明るくポップな色使いが新演出の雰囲気に。
でも作品はこれほどポップでなくよいほどあい

ロビー天井のアートワーク。
劇場に足を踏み入れた瞬間にワクワクします。

終演後の東京芸術劇場。
大きな吹き抜けとガラスの建築がいつ見ても印象的